
5月吉日。
ヨコヤマギターズ担当より当店へ1本の電話が入りました。
「村主さんから依頼貰ってた海ハカランダのレア材、見つけたましたよ!」
僕「ホントですか!!ありがとうございます!!」
「でも、早く来ないとすぐ無くなっちゃうかもしれなくて。。。」
僕「そうですか、わかりました!すぐに行きます!」
「でもね~。。ハンドクラフトフェスが近付いてるから横山がなかなか時間取れないかもで。。」
僕「すぐに行きます!!!!!」
「わかりました。ではすぐにでも時間作るので待ってます。(笑)」
海ハカランダ材で良いのが入ったら連絡してくれとずっと伝えていた私は急ぎ足で出張申請を取り、
この電話の1週間後には横山工房へと向かったのでした!!笑
”善は急げ”材がなくなる前に早速出発です!
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■5月某日 快晴
朝8時にヨコヤマギターズスタッフと京都駅にて待ち合わせ。当日は気持ちの良い5月晴れ。
少し久しぶりとなった横山工房訪問に旨を高鳴らせながら、長野までの約5時間のドライブをBGM:Tommy Emmanuelでひた走ります。
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京都からですと車なら約5時間ほど。
何度来てものどかでアルプスの山々に囲まれた
絶好のロケーションに感動します。
このような環境で朝早くから夕暮れまで皆様のオーダーされたギターは作り出されているのですね。
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長野県松本からさらに車を走らせ、
山々に囲まれゆったりとした景色が続きます。
見覚えのある景色を見ながら、
車の揺れに身をまかせていると。。。
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ありました!
お久しぶりです。(僕個人としては2年ぶり)
横山さんが全てのヨコヤマギターの作業をされる横山工房に無事到着!
お車が既に止まっており、横山さんはもう待ってくれているようです!
意外に甘い物も好きな横山さんへ京都名物生八橋を片手に、久しぶりに工房のドアを叩くのでした。
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最も良い材を手に入れろ!:杢材選定スタート!
今回のモデルの構想は最上級の”timeless Jacaranda ”(通称海ハカランダ)を使った1本。
更にはトップ材やネック材など、材を選べる部分は全て厳選してプレミアムグレードの1本にしようというもの。
そのような高い希望を持ってこの日を迎えた私は、今回の訪問で2つのことを決めておりました。
・1つ目は実際使用する杢材を横山さんと共に全て選べる強みを生かして、今回の仕様に必要な材は
全て妥協無く今あるストックの中で1番良いものを使わせて貰おう。
・2つ目は工房という最前線で横山さんが考案されている
最新の仕様を今回のカスタムオーダーに盛り込んで貰おうというもの。
上記の2つを目標にして、ここから長い長い材選定が始まりました。。
Mission.1:サイド&バック材選定
まずは今回の訪問のメインとなったサイド&バック材の選定からスタート。
海ハカランダ材の選定に入ります。
海ハカランダ材とは、海底に沈んでいたハカランダの大木を引き上げ、充分に乾燥させてギター用に使用できるものを厳選した木材です。
木材の売買の際は「ハカランダ」として取引されており、ハカランダも海ハカランダも区別無くどちらも同価値で取引されているとのこと.。海ハカランダという呼び名もヨコヤマギター独特のもので、そのサウンドの違いから横山さんたってのこだわりで分けられております。
海ハカランダ材に関してはこの日に行いました別企画”~徹底対談~海ハカランダの謎に迫る”をご覧下さい。
(※現在作成中)
今回のモデルの最重要ポイント「極上のサイド&バック材」達です。
ヨコヤマギターズらしいセンターサップの入ったとてもレアな杢目。
「(横山さん以降Y:)こんな風にパッと見てハカランダとわかる杢目の単板材は今やすっごく貴重だよ」
現在工房にあった海ハカランダ材のストックを見せていただき、その中でも選りすぐりの材のみを発掘、3枚にまで絞り込みました。
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絞り込んだ材を更に杢目選定。
実際に今回オーダー予定のシェイプARの型を使ってより美しい見た目となり得る材を横山さんと相談。
「Y:この板ならそうじゃなくて、この節もわざと入れてこう型取った方が最近はうけるよ。これは綺麗な柾目だからあえてこうしてさ。。」
などなど、今までの経験でサップ材の美しい見せ方などを教えてくれる横山さん。
確かにかっこ良い!!と思わせられる部分ばかりで、木と木の杢目の組み合わせのセンスなど熟練された様々なアドバイスを頂き、「さすがだなぁ」とただただ感心させて頂きました。
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ここからはプロの選定。
横山さんが念入りにタッピング(木材段階での鳴りのチェック。叩いて鳴る音から出来上がるギターのサウンドの傾向をある程度予測、絞り込みます)をして選んでくれました。
「Y:これが1番だね~。」
(所要時間僅か3分ほど)
「Y:透き通る高域が気持ち良いね。良い音に仕上がると思うよ。」と大推薦。
確かにこの板だけは「カッコーーーーっン」と透き通る既に気持ちの良いサウンドで鳴っているのが僕でもはっきりわかりました!
良質なものにめぐり合えたと既に僕の気分は最高潮に。。
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そうして選んだ材がこちら!ブックマッチのセンターにはサップが美しく通り、
その両サイドは柾目にビシッと詰まっており、ヴィンテージマーティンに見られるような美しさです。
Mission.2:トップ材選定
サイド&バック材の選定の余韻に浸りながら、休む間もなくトップ材の選定に入ります。
正直、今回はトップ材の選定に一番時間がかかりました。
横山さんと色々と検討した結果、今回使用することになったのは数あるスプルース材の中でも最上位に位置づけされている
アディロンダック・スプルースです。
横山さんの持つ良質なアディロンダック・スプルースのストックの中から、思い描く海ハカランダ・サウンドに近づけるべく徹底的に選定させていただきました!!

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「僕:今回のモデルは海ハカランダの良さを最大限に引き出した1本にしたいので、それにピッタリのトップ材を選定できるかが最重要課題なんです!」
横山さんにサウンドイメージを伝えるとおもむろにストックを引っ張り出して来てくれました。
その量に唖然!すごいです!
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トップ材はもちろん見た目も大事ですが、やはりそのギターのサウンドを大きく左右する為、まずは徹底的に横山さんにタッピングして貰い、もっとも上質で今回のサウンドに適した物を選んでいただきます。
この作業でかなり時間を使い、横山さんもヘトヘトに。。
購入されるお客様の為にも妥協したくない!とお伝えしていた為、僕にずっと付き合ってくれる横山さん。本当に感謝でした。
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「アディロンとハカランダの組み合わせは材料選びが肝」と横山さん。
その目は真剣そのもの。
「Y:アディロンは最初はジャーマンなんかに比べて鳴らないように感じるかもだけど、弾き込む事で”鳴りすぎるくらい鳴るようになる”」とのことで、選定したハカランダの鳴りを最大限生かせるようにと、数枚に絞った中からも時間をかけて最も適した物を選んでくれました。
「Y:さっき選んだ海ハカランダにこのアディロンを合わせたら良い音で鳴ってくれると思うよ~」と太鼓判を押してくれました。
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そうして選んでいただいたトップ材はこちら!
ビッシリと狭い間隔で詰まった柾目は、存分にその美しさと高級感を感じていただけます!
Mission.3:ネック材選定
ここまでで既にかなりの時間を費やしてしまいましたが、
次もギター作りにとってとても大事な部分となるネック材の選定です。
サウンドに大きな差を与えるネック材は、ギターの寿命や耐久性にも直結してくる重要ポイント!
まだまだ気が抜けません!

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さぁ、ネック材を選ぼうという時に僕は工房の隅に山積みにされたある物に気付いてしまいました!それはなんと1ピースネックの山!
横山さんのストックでも1ピースのネック材は今や殆ど無いと聞いていたのでビックリ!
「Y:実は今回、たまたま入荷できたんだよ。すぐり君はちょうど良いタイミングに来たね。」
とのことで、なんというベストタイミング!
ネックは普通に2ピースにする予定だったので僕として願ったり叶ったりの状況にテンションMAXで材選びスタート!
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興奮しながらネック材を漁る僕。
その途中である事に気付きました。
数本だけ(実際10本も無い)”H”とメモ書きされている材が紛れていました。
「僕:横山さん?この”H”って何ですか?」
「Y:それホンジュラスマホガニーの1ピース。」
「僕:キタ―――(゜∀゜)―――!!!(笑)」
ヨコヤマギターでもホンジュラスマホガニーの1ピースネックは2013年ごろから材料が無くかなり稀少となっております。
「Y:実際、この数本が無くなったらもう入荷できないと思うよ。多分だけど、うちでは最後のホンマホの1ピースになるんじゃないかな~。」
とのこと。この瞬間に今回のギターのネックはホンジュラスマホガニーの1ピースに決まりました。
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極上のネック材を前に思わずにやけてしまう僕。
そしてこの数少ない中でも一番良いのを使わせて貰おうと企みます。
「僕:横山さん。とりあえずホンマホの1ピースネックのストック全部見せてください!」
「Y:えーー。別にどれも遜色ないよ。。」
あれ?既にサイドバック材とトップ材の選定で引っ張り回してしまったのでお疲れ気味の横山さん。乗ってきてくれません。
そこで作戦を変えて。。
「僕:横山さん。どんなネック材が良材と言われる物なんですか?僕なんかには見分けが付かなくて。。」
と、頼み方を変えてみました。
すると。。。
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「Y:そんなの見たらわかるだろ!ほら、例えばそれなんかは杢目が斜めに入ってるけど、これは真っ直ぐ柾目に入ってる!」
急に熱心に教えてくれる横山さん。
上手く職人魂に火をつけれたようです。
「僕:では、これとこれはどうですか?」
「Y:それならこっちのがスッとした良い材だよ。」
と絞り込んで下さる横山さん。
そして遂に!
「Y:あっ、これ良いね。こういうのを柾目の中でも数少ない”本柾”っていうんだよ。こういうのはめったになくて。。。」
「僕:それ!それでお願いします!!」
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そうして横山さんに積極的?笑 に選んでいただいたネックがこちら!
ホンジュラスマホガニー1ピースネックの中でも”本柾”のネック材。良いのに当たりました。
Mission.4:構造材選定
さて、次もサウンドを左右するブリッジや指板材などの構造材の選択です。
まず、ブリッジや指板に関してですが、ここは構想がほぼ決まっておりました。
ずばり黒檀(エボニー)です。
今までお客さまのカスタムで色々な材を試してきましたが、現状でソロギター向けのギターに一番わかり易い材は黒檀だと思っております。
実際95パーセントは黒檀で作る。と横山さんもおっしゃっておりました。

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そんな訳でエボニー駒の選定からスタート。
ネックと同じく、ちょうど作業をしてくれていたようで沢山の駒が直ぐにでも使える状態にして頂いておりました。
すると横山さんからまさかの一言が
「Y:すぐり君、実は、今アレもちょっとだけだけどあるんだよ。」
「僕:アレって何ですか?」
「Y:この前ワタナベ楽器さんのお客様オーダーの時に特別使ったやつあったじゃん?」
「僕:え?アレってまだストックあったんですか?」
そんなこんなで横山さん秘蔵の材として特別に用意してくれたのが。。
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それがこちら。
縞黒檀(マッカーサー・エボニー)です!!
実は、以前お客様たってのご希望でお客様オーダーのヨコヤマギターでこのマッカーサーエボニーを使用させて頂いたことがありました。(そちらのギターがヨコヤマギターでのマッカーサー・エボニー仕様の1号機)
その出来上がりの抜群のサウンドに以降のそのお客様からのギターオーダーの際には、指板&ブリッジはマッカーサー・エボニーの指定が付くほど優秀な木材でした。
ほとんど在庫が無く通常のオーダーの際には選択肢の中に入っておりませんが、今回は特別に掘り出させて頂きました。
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実際ギターに使用するともっと黒っぽくなり、うっすら縞が入っているというニュアンスになります。
ヨコヤマギターでは希少材として取り扱われているので、「ブリッジだけ」という選定が出来ず「指板&ブリッジ&天神」の1セットになりますので、モノトーンなビジュアルになると思います。
ヨコヤマギターでこのマッカーサー・エボニー仕様が世に出回るのは今回のカスタムが初めてとのこと。
以前、SUMIギターの鷲見さんらと一緒にアコースティックギターマガジンでこの縞黒檀に関して特集されていたことがありましたので、気になっていた方も多いのではないでしょうか?
出来上がりのサウンドを楽しみにお待ちください。
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更に更に!何か面白い掘り出し物がないか工房内で材を漁っていると気になる材が。。

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「僕:あれ、これっていつも使ってるブレーシング材ですか?」
「Y:あ?えっとこれはねぇ、今度やってみようと思ってつい先日仕入れて製材したところなんだよ。」
「僕:これ良い杢目してますけど何の材ですか?」
「Y:これ実はアディロンダックスプルース材で作ったブレーシング材なんだよ。」
「僕:アディロンを使ったブレーシング材ですか!それはいいですね!さっそく今回のモデルにも組み込んでいいですか??」
「Y:(少し考えて)せっかく来てくれたんだから良いよ。今回のモデルにも合いそうだし。」
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ということで、指板、ブリッジ材は「マッカーサー・エボニー」。
ブレーシング材は「アディロンダックスプルース」とどちらも新素材をゲットできました。
今までに無い仕様でどのようなサウンドで仕上がってくるか、今から楽しみです!
Mission.5:装飾部の選定
さて、主要な部分の選定がほぼ終了し、残りは細やかな装飾部の選定です。
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ピックガードはこちらのタイプをチョイス。
(画像は見本です。)
まだ名前が付いていないとのことで、この場で「双葉PG」と呼び名が決まりました。笑
ピックガードに使用する材も天神、ブリッジ、指板などに合わせてマッカーサーエボニーをチョイスさせて頂きました。
モノトーンのフェイスでモダンなルックスになると思います。
また、サウンドホール淵にも見た目を引き締める為エボニー材を巻いてもらうよう指定しました。
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せっかく高価なモデルになるので、やらしくない感じに貝を入れたいと横山さんに相談すると「良いのがあるよ」と出して来てくれたのがこちらの黒蝶貝。アバロンほどギラギラすることなく自然な高級感を演出してくれます。
上記ピックガード風パーツのライン部分と天神のヨコヤマ”Y”マーク、サイドポジションマークにこちらの材料を使わせて頂く事になりました。
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更にはマニアックなところまでカスタム!
ヨコヤマギターファンの方でしたらこの画像を見て「あれ?なんか変だぞ?」と思われた方も多いはず。
そう、ボディバインディング横のラインが通常「黒・白・黒」と並んでいるのがこれは「白・黒・白」の逆縞となっているのです!
「僕:これめっちゃ格好良いじゃないですか!」
「Y:これね、実はたまたま間違えてしまっただけなんだけどね。。。」
「僕:良いですよコレ!今回のカスタムこれにします!」
ということで、このモデルは写真のように逆縞でお願いしてきました!
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また、フレット数ですが
「今なら22フレットだよ。」という横山さんからのアドバイスも頂き今回のカスタムは22フレット仕様にしました。(写真は見本です。)
近年のソロギタープレイを考え、より多彩な演奏が出来るようにと配慮させていただきました。
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そして無事に終了!
お昼に到着してから1本のギターの材選定だけで終わってみれば日も暮れかけていました。
今回は遠慮なく時間を使い、本当に厳選した材だけを選ばせて頂いたので、ハイコストパフォーマンスな最上級グレードのギターに出来上がってくると思います。
「またおいで~。」と車を見送ってくれる横山さん。
もちろんまた来ます!
このギターで最高の音色を鳴らしていただけるよう、この後はどうぞよろしくお願いします!
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AR-ATB"Premium Select"
-仕様-
ボディ形状:オーディトリアム/Rカッタウェイ |
トップ材:アディロンダックスプルース(選定品) |
ネック形状:ちょっと三角/松井ver |
サイド&バック材:海ハカランダ(選定品) |
スケール:648mm |
ネック材:ホンジュラスマホガニー1ピース(選定品) |
フレット数:22Fret |
指板材:マッカーサー・エボニー |
指板幅:44.5mm/59.0mm |
ブリッジ材:マッカーサー・エボニー |
ナット&サドル材:牛骨(漂白無し) |
天神表化粧板:マッカーサー・エボニー |
ヘッドバインディング:なし |
トップ&サイド&バック:艶ありネック:艶無し
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指板エンド:2ステップウェーブ |
ロゼッタ:黒蝶貝ライン+双葉PG/マッカーサーエボニー |
ボディバインディング:インディアンローズウッド(逆縞) |
ペグ/本体:GOTOH/SGL510Z CK |
ブレーシング材:アディロンダックスプルース
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付属品:ギグバッグ |
販売価格 590,000円(税別)
弾き込むほどに育つ極上スペックのサウンドを存分にお楽しみいただける1本となりました。
今秋頃入荷予定です。
当店では、お客様からのカスタムオーダーのご依頼も随時受け付けております。
お客様のイメージのギターに可能な限り近づけるお手伝いが出来ればと思いますので、
お電話、メールにてどうぞお気軽にお問い合わせ下さい。
今までのヨコヤマギターズ工房訪問はこちらをご覧下さい♪
~第一回目訪問♪~
~第二回目訪問♪~
☆最新情報更新☆7/12現在
ヨコヤマギターズより連絡があり、現在の海ハカランダカスタムの製作途中の画像が届きました。
「作業は順調に進んでおります。」とのことで一安心です。
以下が現在の画像です。
・トップの様子です |
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アディロンダックスプルースの杢目がかなり綺麗に出ており、美しいフェイスに出来上がっております。さすがプレミアムグレード! |
・バックの様子です |
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想像していた通り、色合いは黒く落ち込んで格好良い感じに仕上がっており安心しました。柾目のハカランダ杢はやはり高級感が合って良いですね! |
・サイドの様子です |
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サイドの杢目はこんな感じです。サップ(白いすじ)がトップ材側にきており個性的な見た目です。エキゾチックでありながらもカラーが落ち着いているので良い雰囲気です。 |
いかがでしたでしょうか?
我ながら、出来上がりがすっごく楽しみです。。。
サウンドもきっと素晴らしい物になるでしょう。
どうぞ期待していてくださいね♪
上記商品、又はヨコヤマギターのカスタムオーダーに関しましては、
担当:村主(すぐり)まで。