
『HEADWAY』総責任者:安井雅人
最近特に耳にすることも多くなったのではないでしょうか。
今年で40周年を迎えた国産アコースティックギターの主要ブランドの一つHEADWAY(ヘッドウェイ)ギターズ。
長野県松本市に工房を構え、1977年創業。信州の名工にも選ばれ技術顧問となっている「百瀬恭夫(ももせやすお)」氏を中心として確実にギターファンの心を掴んできた当ブランドですが、現在は2011年に発足させた手工チーム、ATB(アスカチームビルド)にて大変質の高いギターを少数ながら世に送り出しています。
今回は、そんなHEADWAYギターに於いて、現在アコースティック部門のトップとして総責任者を務めている安井氏を現地長野で取材してきました。今現在のHEADWAYのこと、飛鳥チームビルドのこと、たくさん聞いて来ましたのでお時間のある際にでもご拝読いただけましたら幸いです。
飛鳥チームビルドについて
「まずは飛鳥チームビルド(ATB)について教えて頂けますか?飛鳥チームビルドというワードを近年は良く耳にするのですが、どういったコンセプトがあるのか、どういったラインになるのかがまだ詳しく知らないお客様もいらっしゃると思いますので、最初に教えて頂きたいのですが。」
安井氏:飛鳥チームビルドは2011年に発足しました。今年で6年目になります。最初は3名で始めたのですが、今は総勢で8名が所属しています。発足のきっかけとして、ATBが始まるころは百瀬もちょうど70歳になろうという頃で、今後ずっと百瀬がいつまでもギターを作れるわけではないので、百瀬が引退となった時に、HEADWAYの若い子たちだけでもすんなり百瀬が作って来たHEADWAYというブランドをしっかり継承して作れるようにしておきたいという考えから、若い人間を育てるというコンセプトと、お客様からのご要望にお応えしやすいようにという2つの側面から成り立ちました。
ATBは毎月決まった数をあげるというコンセプトでやっています。今は月産で28本を常に品質を維持して作り続けるようにしています。そして、生産本数を一定に保ちつつ、新しい木材にもどんどん挑戦していこうというスタンスでやっています。
「ATBでのギターをこうしていきたい。というような方向性ってものはあるのですか?」
安井氏:基本的にHEADWAYというブランドの持つイメージを崩したいとは考えていません。ですので、あまりに奇抜過ぎることをやって、百瀬が作って来たブランドイメージを崩したくはないと思っています。かと言って、いつまでもMartinコピーっていう括りだけでやっていくと、お客様は必ず離れて行ってしまうと思うんです。ですので、そこは上手く新しい事もやりつつ、伝統の技やデザインはしっかり継承してやっていきたいと思っています。
「ATBのギターとスタンダードシリーズの違いを教えて頂けますか?」
安井氏:これは公表させて頂いている通り「ネックの後仕込み」と「トラスロッドの種類」の2点が変わっているという事で、その他はやっていることも作っている人間も全て同じです。ネックの仕込みというのは勿論アコースティックギターに於いて凄く大切な部分です。ATB作品では塗装をすべて終えた後にネックを仕込むことで、最も適した状態の仕込み角を設定しています。しかしデメリットも有り、これには手間も技術もかかり生産本数が限られてしまう為、スタンダードシリーズではこの手間を省くべくネック仕込みを先にして生産効率を上げるように工夫しています。
あと、トラスロッドの違いについては現物を見て下さい。

※上がATB作品の物。下がスタンダードシリーズの物。
安井氏:上の物は棒鉄芯と呼ばれるもので、ギターの音に限りなく影響の少ない物として採用しています。下はアルミチャンネルというロッドで、木工加工的に非常に簡単という利点があります。棒鉄芯は埋め込むコンマ何ミリの差がロッドの効きにダイレクトに関わってきますので、組み込む際の木工に技術が必要で手間がかかるという反面、音質的には木の本質的な鳴りと言いますか、「木っぽさ」をしっかり出せると思っています。アルミチャンネルは個人的にはどうしても金属音的な要素が音の中に入って来るような気がします。そういった側面から、より高価なATB作品には費用をかけてでも棒鉄芯を採用します。そして、加工が容易でコストを落とせるアルミチャンネルを使用して上質なギターを安価にというコンセプトなのがスタンダード。という考え方で分けているという状態ですね。