安いアルトサックスの違い

低価格帯のアルトサックスの比較と特徴

▼比較ラインナップ
１つの基準となっている定番品、ヤマハの一番安いアルトサックスYAS-280以下の価格帯の主なアルトサックスが以下です。 さらに安いものやあまり聞かないブランド名が付いているものなどは、いわゆる整備されていないものや、楽器流通以外の製品であったりするので注意が必要です。

・ZEFF ( ゼフ )　ZAS-30...管楽器専門店ではなく比較的安い楽器、輸入品の代理店メーカーです。よって管楽器においてはラインナップも少なく小規模ですが、安い中でも品質にこだわりがあり、また調整などの管理は小規模であることから比較的整っている傾向にあります。
・Kaerntner ( ケルントナー ) KAL-62...業界大手でいわゆるコピーモデル的な自社製品から、ありとあらゆる輸入品を扱うメーカー。管楽器においては安さを追求している故、品質は価格相応。
・J Michael ( Jマイケル )　AL-500....管弦楽器の専門メーカー。上記２つの製品は似たり寄ったりですが、やはり専門店だけありJマイケルはそれよりかは上の品質。
・Antigua eldon　アンティグア エルドン...サックスの有名ブランドセルマーの代理店であるメーカーがプロデュースしているブランド。Jマイケルとヤマハの間の価格帯を狙った売価設定ですので、類を見ないラインナップ。品質はJマイケルより少し上ではありますが、大差というほどではないです。
・Antigua GL アルトサックス...上記エルドンと同じくサックスの有名ブランドセルマーの代理店であるメーカーがプロデュースしているブランド。アンティグアが先にでき、その後、さらに低価格帯のエルドンができました。この価格まで出せばやっと台湾製となります。但し、見た目のつくりは粗いです。
・JUPITER ( ジュピター ) JAS500...日本の知名度は低いですがスクールバンドの楽器として世界的には多くの需要があるブランドです。入門モデルから品質の高いラインナップまでもが揃っており、国内はアルタス、ハンミッヒ、シルキー、B＆S、ウィルソンなどの管楽器を扱う管弦の専門メーカー。学校やプロとの繋がりも強く現場からの意見も取り入れた会社体制です。
・YAMAHA ( ヤマハ ) YAS-280...国内、世界で管楽器のシェアはナンバーワンです。見た目、楽器の品質、音色において全てバランスが良いのはやはりヤマハです。見た目のつくりの粗さがイヤなのであれば、ヤマハ以上を買うしかありません。日本製は2016年頃に生産を終了し、今はインドネシア製になっています。

▼価格について
25万以下で日本製のものは殆ど手に入りません。ヤマハは日本のメーカーですが、YAS-280、YAS-380、YAS-480はインドネシア製です。他、低価格対の製品はまず中国製、台湾製になります。中学校の吹奏楽で使用される定番品はYAS-62(25万以上)が主流となり、そこまで金額が出せない方でYAS-280のあたりでしょうか。

▼低価格帯の楽器によくあるトラブル
故障や不具合ではなく楽器の精度によって以下のようなことが起こる可能性があるため、演奏よりも他のことへ技量を使い演奏に集中できないということがあるかもしれません。また音質や音量の限界や、抵抗感によって自分に技術があったとしても音楽表現ができる楽器ではないと結果良い演奏ができないということにもなるかもしれません。
・調整がきっちりされていない
・低音が高音の音に裏返る
・低音の音が震える
・高音で異音がする
・小さい音を出そうとするとプツっと途切れる
・大きい音があまり出ない
・大きい音を出すと音が割れる
・オクターブキイがうまく動作しない
・ピッチが安定しない
・耐久性が低い
・出にくい音がある
・運指が遠くてスムーズに指が動かせない
・音が響かない
・音がかすれる
などなど

▼高い楽器について
決して高いものが全ての方に良いというわけではありません。初心者層の楽器は音が鳴らしやすいように設計されています。逆に言えば高価格帯の楽器は鳴らしやすい楽器とは限らないということ。ある程度経験を積めば肺活量は息のコントロールが可能となり、鳴らしやすいという特徴だけでは思うような音質と音量が得られないのです。一定の境界線を越える価格帯にもなると何かしらに特化した特徴の楽器のラインナップであったりします。(例えばジャズ向き、暗い音色など)

▼安いモデルの比較
※2021年時点での個体についての情報であり、個体差や仕様変更などがある場合がございます。各種商品ページにてご確認、または気になる点がございましたら別途お問い合わせをお願いします。
■見た目　※あくまでも弊社でランダムに選んだ１個体との比較につき個体差はあるものとします。下にいくほど良くなる傾向にあります。
・ZEFF ZAS-30...つくりは粗い。全体に研磨キズを含めキズが多い。キイには特に側面等に深めのキズが多い。メッキをかける前に既にあるキズのようで元々のつくりの粗さにも原因があると思われる。管の内側とかに汚れみたいな跡があったりもする。
・Kaerntner KAL-62...つくりは粗い。全体に研磨キズを含めキズが多い。キイには特に側面等に深めのキズが多い。キィの断面がきちんと加工されておらず、指にあたると少し痛かったり違和感を感じる場合もあるかもしれない。管の内側とかに汚れみたいな跡があったりもする。
・J Michael AL-500...つくりは粗い。全体に研磨キズを含めキズが多い。ラッカーのムラみたいなものあり。
・Antigua eldon エルドン....つくりは粗い。上記のものと比較すると、塗装は基本的にはきれいなものが多い。キィのシノギ部分にラッカーが剥げていることがある。管の内側とかに汚れみたいな跡があったりもする。
・Antigua...全体的には綺麗に見えますが、バネを掛けている部分等に凸凹があります。管の内部には汚れみたいな跡があったりもする。
・JUPITER JAS500...基本的には綺麗です。キイの裏側など少し見えにくい場所には若干粗さがある。管の内部には汚れみたいな跡があったりもする。
・YAMAHA YAS-280...均等に塗装がされており、表面はピカピカに磨かれきれいになっている。つくり、見た目に妥協できない人はヤマハ以上の製品を手にするしかないと思われる。ヤマハといえども管の内側とかに汚れみたいな跡があったりもする。

■吹奏感
楽器の精度が悪いと、調整での微調整によって改善される吹きにくさもありますが、基本的には整備不備ではなく、その楽器特有の問題であり製品不具合ではありません。低価格帯の楽器を買えば起こりえることで練習して解決するしかないです。以下項目パッドの精度での影響もあり。
・ZEFF ZAS-30...より厳重に調整をすることで全体的に音がしっかりとなるようにもなる。低音はまぁ普通にならしにくい。抵抗感がかなり強いため吹きにくさも感じる。練習して解決するしかない。
・Kaerntner KAL-62...メーカーの調整のみだと低音がかなり鳴らしにくい。正直不具合かと感じるレベル。パッド合わせとバランス調整の精度が低いのが原因と思われる。抵抗感がかなり強いため吹きにくさも感じる。
・J Michael AL-500...メーカー調整のみでも比較的に安定して音が鳴る。ただし低音の鳴らしにくさはあり。(これはサックス特有でもある。)注意点として最低音を演奏した際に小指がLowC#レバーにあたると途端に吹きずらくなるなどがあり。これは構造の問題。
・Antigua eldon エルドン...出荷前に調整をするとAL-500よりはやはり状態が良い。メーカーの調整だけだとAL-500とそう変わらない場合もある。このくらいの価格まで出せば抵抗感が比較的解消され吹きにくさも減る。
・Antigua...納品された状態においてはエルドンと同じく若干調整が甘いため本来のクオリティが発揮できてない。エルドンより抵抗感があり鳴りが良い傾向。
・JUPITER JAS500...メーカーがきっちり調整して出荷してくるため比較的安定した品質。ヤマハYAS-280が軽めなことに対し重厚感のあるつくりで抵抗感があり、ヤマハでは軽すぎるため息を吹き込んでも音圧や音量が不足する傾向にありますが、JAS500は息のコントロールにそれなりに応えてくれるのでパワフルにしっかりならしたい方におすすめ。吹きやすさだけ求めるならヤマハの方が良いですが、ジュピターは高音から低音までバランスよくしっかり鳴ってくれるところが良いです。
・YAMAHA YAS-280...メーカーの調整だけでも安定した吹奏感。さすがヤマハのクオリティ。少ない息でも吹きやすい。初心者でも低音の鳴らしにくさも他のよりはかなりマシ。特定の運指で起こる特有のピッチの悪さもヤマハは楽器の品質、構造によってかなりカバーされている。

■キイ形状
ある程度の形や連動の仕方は決まっていますが、多少の形や傾き加減のによってキィの押しやすさが変わります。
●テーブルキイ...左手小指を使用するまとまっているキィ（G#レバー、LowC#キィ、LowBキィ、LowB♭キィ）の総称。
・ZAS-30、KAL-62、AL-500、Antigua、JUPITER JAS500...演奏に大きな支障はないが、LowC#キィからLowBキィの移行が多少しにくい。
・エルドン…LowBキィのローラー部分が少し曲がっている形状なので、LowC#キィからLowBキィの移行がしやすい。
・YAMAHA YAS-280...LowBキィのローラー部分が少し曲がっている形状で、LowC#、LowB、LowB♭キィの高さがある程度決められているのでそれぞれのキィへの移行がしやすくなる


 

●シーソ機構...LowC#とLowBをつないでいるキィ構造。シーソのように動くので指をすべらせて移動することができ、操作性が向上します。
・ZAS-30、KAL-62、AL-500、エルドン、Antigua、JAS500...シーソー機構あり
・YAMAHA YAS-280...シーソ機構なし

●LowC#開き止めメカ...LowB♭キィやLowBキィを押したときに指がLowC＃キィにあたることがあります。その際にLowC#キィが開いて息が漏れてしまい音がうまく出せないなどが起こりますがLowBキィについている調節ネジによって阻止することが出来ます。
・ZAS-30、KAL-62、AL-500...LowC#開き止めメカあり。LowC＃キィのバネの力が強すぎたり、キィ自体の精度が低いことによりLowC＃キィからの息漏れを完全に阻止することが出来ないことがあります。これは精度の問題です。
・エルドン、Antigua、JAS-500、YAS-280...LowC#開き止めメカあり。精度もよく安定しています。

●E♭/LowCキィ...右手小指を使用するキィ。鳴らしにくい低音の下のドを吹く運指は指を全て使い、さらに小指を大きく広げるためキイの大きさによって吹きやすさに影響がある。
・ZEFF ZAS-30...ヤマハ、エルドンに比較するとキイが大きめで指の距離が長く感じる。角度もなくなくフラットなキイ位置。
・Kaerntner KAL-62...ヤマハ、エルドンに比較するとキイが大きめで指の距離が長く感じる。角度もなくなくフラットなキイ位置。
・J Michael AL-500...ヤマハ、エルドンに比較するとキイが大きめで指の距離が長く感じる。角度もなくなくフラットなキイ位置。
・Antigua eldon エルドン...ヤマハに比較するとキイが大きめで指の距離が長く感じる。角度もなくなくフラットなキイ位置。
・Antigua...ヤマハに比較するとキィが大きめで指の距離が長く感じる。角度もなくフラットなキィ。他の機種に比べると厚みが薄い状態。
・JUPITER JAS500...ヤマハに比較するとキィが大きめで指の距離が長く感じる。LoｗCキィに若干の角度はついているが、ほぼフラット。
・YAMAHA YAS-280...キイが小さめにつくられていて距離が近いため押しやすい。さらにキイが斜めになっているので押すときのストロークも短くなっている。

■バネ(全てのキイに使われている)
●ステンレス：腐食に対する耐性を持つ合金鋼。硬質鋼に比べて強度はない。
●硬質鋼：強度が強く、レスポンスが良いので早いパッセージにも反応が良い。ステンレスより錆びやすい。
・ZEFF ZAS-30...硬質鋼
・Kaerntner KAL-62...硬質鋼
・J Michael AL-500...ステンレス
・Antigua eldon エルドン...硬質鋼(板ばねはステンレス)
・Antigua...硬質鋼
・JUPITER JAS500...硬質鋼
・YAMAHA YAS-280...ステンレス

■パッド(タンポ)とレゾネーター
楽器の精度が悪いものにはパッドに隙間が多い傾向にあります。度合いによる部分でありメーカーが認めた基準をクリアしていれば隙間があっても製品不具合ではありません。しっかり抑えないと穴が塞げなかったりするので吹奏感に影響する部分です。
レゾネーターとはパッドの真ん中にあるパーツで音孔から出た音に対して音を響かせる役割を担っています。
●メタルレゾネーター：金属で出来ているため、より明るい音が出る。(ジャズはメタルレゾネーターのパッドを使用している傾向がある)
●プラスチックレゾネーター：プラスチックなのでメタルに比べて柔らかい音が出る。スタンダートモデルやクラシック向けなど多くの楽器に使用されている。
・ZEFF ZAS-30...メタルレゾネーター。パッド合わせの精度が低い。全体的にところどころパッドと音孔に隙間がある。
・Kaerntner KAL-62...メタルレゾネーター。パッド合わせの精度はそここそ。ほぼ全部パッドの前側に隙間がある。パッドの素材によってキイを押した感触が柔らかく感じられる。
・J Michael AL-500...メタルレゾネーター。パッド合わせの精度はそここそ。ほぼ全部パッドの前側に隙間がある。パッドの素材によってキイを押した感触が柔らかく感じられる。
・Antigua eldon エルドン...メタルレゾネーター。パッド合わせの精度は比較的良好。キィを押したときにも感触がかちっとしている状態。 また、音孔の溝がパッドにしっかりついておりより馴染んでいる。
・Antigua...メタルレゾネーター。パッド合わせの精度は比較的良好。キィを押したときにも感触がかちっとしている状態。見た感じ革の状態も比較的丈夫な様子。
・JUPITER JAS500...プラスチックレゾネーター。パッド合わせの精度は品質相応に良好。革製タンポは比較的丈夫な方と思われます。
・YAMAHA YAS-280...プラスチックレゾネーター。パッド合わせの精度良し。隙間も含め安定している。キィが開く構造の場所にはコルクが挟まれ、キィが閉じた状態のまま店に納品されるため保管による状態変化にまで配慮されている。弊社では例外を除き出荷時にこのコルクを外し調整した上でお客様へのお届けを行っています。

■サムレスト(指掛け)
・ZEFF ZAS-30...金属製。可動式。
・Kaerntner KAL-62...金属製。可動式。
・J Michael AL-500...金属製。可動式。
・Antigua eldon エルドン...プラスチック。可動式。
・Antigua...金属製。可動式
・JUPITER JAS500...プラスチック。可動式。
・YAMAHA YAS-280...プラスチック。可動式。