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ユーフォニアム/チューバ 出荷前調整と定期メンテナンス![]()
ユーフォニアム・チューバ 出荷前調整と定期メンテナンス 店頭で買ったら、事前に調整してもらえるでしょうか。日々の変化においては仮に店頭購入したからといって安心できないのです。
メーカーで検品・調整された楽器が当社へ納品されます。しかしながら、100%の状態であった楽器は振動や素材の特性、気温や湿度、保管状態、保管期間によって変化し残念ながら100%の状態を維持することができません。それは楽器の値段に関わらず楽器の特性であり奏者はそれを理解し付き合っていく必要があるのです。当社の行う出荷前調整は、この楽器の状態をより100%に近づける作業とも言えます。新品、未開封を好む方もおられますが、管楽器においては未開封でも仮に1年前の在庫品であれば残念ながらもうその楽器のクオリティはしっかり発揮されない状態かもしれません。例えば、メーカー出荷時点では抜差し管にはグリスが塗布されているのがほとんどであり、楽器の保管期間によってはそのグリスが原因で抜差し管が固着してしまう場合もあります。
▼調整について
▼調整と精度について メーカーから弊社へ納品される楽器の状態は、安い楽器はしっかり調整されていない状態が多く、高い楽器はしっかり調整された状態で届く傾向にあると思います。これは元々の楽器の精度の問題と、コストの問題があります。 仮に精度の違う楽器に対し同じ作業工程で調整をしたとしても安い楽器の方が楽器の精度が悪いため、手間と時間がかかります。つまり、安い楽器においてはある程度許容範囲の状態で検品にクリアしないと、人件費=コストが上がってしまうので、安い値段で販売ができなくなります。安いものが値段なりであるのはこういうことです。 精度の悪い楽器は精度の高い楽器より調整の幅が狭く全体のバランスを調整するには技量が必要となります。安い管楽器の扱いや修理の持ち込みが敬遠されたりする背景にはそのこともあるかもしれませんね。上記の通りとなり、安い楽器(精度の悪い楽器)ほど調整をすることによって起こる状態変化の振り幅は広いと言えます。
▼ユーフォニアム/チューバの定期メンテナンスは年に1回くらいがおすすめ。
▼調整をしていない楽器、メンテナンスをしていない楽器はどうなるの?
・ピストンの押しがね裏のフェルトやピストン内部のフェルトが動作による摩擦や経年劣化で消耗します。薄く固くなり、押したときに「カンカン」とした音が鳴ったり、薄くなることでピストンの穴の位置が正常な場所より少しずれ多少吹奏感にも影響が出てきます。
・ピストンやロータリーの日々のお手入れによる蓄積物、使用するオイルの残留、成分にシリコンなどが使用されているとぶよぶよとしたプリン感触の汚れなどが少しづつ溜まっていきます。これを長期間放置すると蓄積し、吹奏感にも影響が出ます。さらにその汚れがピストンやロータリーに侵入すると急に動かなくなってしまう可能性があります。
以下はロータリー式チューバのみ ・振動でレバー部分のネジが緩んで動作が悪くなったり、レバーが外れたりする可能性があります。 ・レバー自体が何らかの圧力等で曲がり、他のパーツと接触してしまったりレバーの高さが変わっていたりします。レバーオイルの不足によりレバー自体の動作が重くなることもあります。 ・ロータリー軸のオイル不足でカチャカチャと異音がすることがあります。 ・ロータリーの動作を制限しているストッパーゴム(主に黒色の円柱型ゴム)がなくなっていたり、体積が小さくなってしまっていることにより動作時にカンカンとノイズが発生します。また、抜差管とロータリーで穴の位置がずれてしまうため吹奏感や音程にも影響が出ます。
パーツが外れていないか確認します。半田外れがあった場合は個体ごと交換するか半田付けを行い修繕します。
ピストンの笠ネジ、底ネジがスムーズに回るかどうか確認します。固すぎたり、回りにくい場合には楽器を傷つけないようにローハイドハンマー(豚の皮製)や木ハンマーでネジ部を叩き振動を与えます。数回繰り返し、スムーズな動きであるかどうか、許容範囲かどうかを検証します。問題があればクリーニングを行い、また改善されない場合には必要に応じてパーツ交換で対処します。
ピストンやロータリーにオイルを注油し、スムーズな動きが得られているか確認します。問題があれば掃除をし、研磨剤等で摺り合わせ調整をします。ピストンのバネの音が目立つ際には、バネとピストンの接する部分にグリスを少量付けることで雑音を解消します。試奏時に構えた状態で問題なく戻ってくるか、演奏に支障が出るような動作不良がないか確認します。
全ての抜き差し管が動作するか確認します。固着している場合は楽器を傷つけないようにクロスを引っかけ引っ張る、またはオイルなどを流し込み管を温めた後に管を引っ張ることで管を抜きます。その後、抜き差し管の掃除をし、新しくグリスをつけます。これでも動きが悪い場合は、抜き差し管と本体側の管の幅、平行具合があっているかをオイルの漏れる方向やノギスで検証、測定し、平行が保たれていなければ手で圧力をかけるか専用の工具を使って修繕します。また、研磨剤等を使用し動きを出します。製品の精度によっては限界もあるため、その楽器で可能な範囲での動作にて終了とします。 レバー(トリガー)が付いている抜差管は演奏中に音程補正をするためかなりスムーズな動きを保つ必要があります。他の抜差管より動きを滑らかにする必要があると考え、精度を求め厳重に処置します。基本作業は上記と同じです。
トリガー付きの抜差管もその他の抜差管と同じく製品の精度によっては限界もあるため、その楽器で可能な範囲での動作にて終了とします。 ウォーターキイコルクがしっかりついているか、欠けていないかを確認します。場合によって接着剤などを足すなどで対応し、欠けが許容範囲を超えていれば新しいものに付け替えるなどします。また、バネに問題がないか確認をし、問題があった場合はパーツ交換を行います。
●(ロータリー式チューバのみ)レバーとロータリーの動作確認 レバーを動かしてレバーとロータリーの動きを確認します。 また、レバーの根本にあるバネの形状に異常が無いかを確認します。 レバーがボールジョイントの楽器はネジが緩んでいないか、必要以上に緩んでいないかをチェックし緩みがあれば締め直します。 不自然なノイズ(ガチャガチャ鳴る等)がないか、レバー自体に歪みがないかも確認します。 ロータリーの動作が重い場合はフタを開けてローターを取り出し、ケーシング内部と共にクリーニングを行ってからオイルを十分に付けて戻します。それでも直りきらないものは研磨剤を使って擦り合せ調整を行います。 精度はメーカーやモデルによって異なるため平均的な仕様範囲での動作が確認できれば終了とします。
●(ロータリー式チューバのみ)ロータリーストッパーゴムの確認 ゴムがしっかり付いているか、ぐらつきがないか確認します。 不安定な場合は接着し、収縮したり紛失している場合は別途パーツを取り寄せて取り付けます。
・ピストンやレバーが問題なく戻ってくるか、演奏に支障が出るような動作不良がないかを確認します。
管体についている指紋、汚れをしっかりと拭き取ります。 ※マウスピースは付属品につき目視確認のみとなり、基本的には試奏を行わないことが殆どです。
▼個体差について |