ヤイリギターが出来るまで 1.自然乾燥 ヤイリギターでは大切な財産の一つがギター材のストックです。 コアやハカランダ、ローズウッド、スプルースといった木材を豊富に備蓄しています。 まずは自然乾燥させて、吸湿、変形しにくい材料にします。その後、保管庫に移し、3〜10年寝かします。短期間で人口乾燥させた不安定な材料は不具合を生 じます。良いギターの条件において、長期間十分に乾燥された良材は欠かすことの出来ない要素なのです。乾燥機に入れるまでに含水率15〜20%ぐらいの状 態にします。 2.人口乾燥 自然乾燥させた木材を乾燥機に入れて含水率10%以下に落とします。指板で約1週間、表板や裏板などの薄いもので、中3日くらい。延べ4日〜5日くらいの間で乾燥をかけます。最初の1日は温度を上げずに、送風だけで乾燥、徐々に温度を上げて約50度〜60度にします。 3.表板・裏板のブックマッチ接合 表板や裏板はブックマッチと呼ばれる方法で接合します。一枚の板をスライスし、左右対称に接合することで美しい木目のギター材が出来ます。接合に使う膠 (にかわ)は、日本伝統的な接着剤ですが、乾燥後の硬さや接着剤の層の薄さ、そして再接着が可能であるという点において、楽器用の接着剤として重要な位置 づけとなっています。反面、正しく使いこなすには知識と経験が必要です。表板の接合は真ん中に少し隙間を空けます。隙間が空いていないと、上下が開いてし ますからです。ねじを締める時の力加減なども、経験と勘を必要とするデリケートな作業です。 4.トップ材の選択 面取りした表板、裏板を見て、使用するギターのタイプを選択します。木目やフシ、シミなどの状態から熟練のクラフトマンがランク分けをします。上位ランクの材料では”コシ”や”しなり”も重要なポイントになってきます。 5.ブレイシング・スキャロップ 表板に強度を与える補強材(力木、ハーモニックバー)がブレイシングです。強度を保ちつつも、響きの良さを損なわず、軽量なギターを作るために、最も効果 的な形で作られています。更に音質を調整するためにブレイシングの端を削り取る作業がスキャロップで、熟練のクラフトマンの手で正確に仕上げていきます。 6.サイド材の曲げと接合 特製ベンディングマシーンを使用して、サイド材の曲げ加工を行います。 曲げ具合を済んだ2つのサイド材とカーフリングを専用の型にセットし、クランプを掛けて膠で強力に接合します。 7.トップ・バック材の接合 表板、裏板とサイド材を膠で接合します。サイド材上にブレイシングの位置をチョークで印して、それぞれの材がピタリと噛み合うように正確に溝を切ります。プレス機にかけてしっかりと固定し接着した後、丸一日かけて接着をより確実なものにします。 8.バインディング バインディングは見た目の美しさだけでなく、表板や裏板の端を保護し、吸湿を防ぐ役目もあります。職人の手で溝を削り、バインディングを巻いていきます。 9.インレイ ヘッドを彩るインレイの埋め込みも、一つひとつ手作業で行っています。様々なデザインに合わせて溝を彫り、素材となる貝殻を埋め込んでいきます。 10.ネックの仕込み、角度調整 ダブテイル(ありほぞ)を削り、ネックの仕込み、角度の調整を行います。音、演奏性、耐久性に影響する重要な工程で、熟練を要する作業です。 11.ネックシェイプの調整 ヤイリギターでは丸みのあるタイプ、三角形に近いタイプ、かまぼこ形と、大きく分けて3種類のネックを製造しています。握った感触は弾きやすさに大きく影 響するため、プロミュージシャンをはじめ多くの方がネック合わせを希望されます。担当クラフトマンは小刀からカンナに至るまで、全て手作りの道具を使って います。 12.塗装前の磨き 何種類ものサンドペーパーや研磨機を駆使して、全体の表面を滑らかにしていきます。 13.マスキング 塗装の際、不要な箇所が汚れないように、確実にマスキングを行います。 14.塗装(ハケ塗りによる目止め) はけを使用した手作業による塗装です。サイドから塗り始め、全体を素早く塗っていきます。一つひとつ丁寧にハケ塗りにて目止めを行った後は丹念に磨きをかけます。 15.塗装(仕上げ塗り) 最初に柔らかい布で細かな汚れを取り除いた後、全体をムラなく塗装していきます。 16.フレットの打ち込み 専用の機械で仮打ちした後、状態を確認しながら1本1本手で打ち込んで仕上げます。 フレットを後打ちすることにより、精度の高いフレット面が得られます。 17.仕上げバフ 塗装後のボディは表面が「ゆず肌」といい、みかんの皮のようにざらついています。それを一度ペーパーで平らにし、ワックスを付けて磨くことで、ツヤを出していきます。それにより鏡のようなつるんとした表面になります。 18.ブリッジの取り付け 塗装、磨きを済ませたボディにブリッジを取り付けるため、その場所の塗装を剥離します。ブリッジも膠を使って接着します。 19.シーズニングルーム 出産を控えた母親が胎児に趣味の良い音楽を聞かせるように、ヤイリギターも胎教を行っています。温度、湿度が調整されたシーズニングルームの中で大音量のクラシック音楽を聴かせ、ボディに”鳴り”を覚えこませていきます。 20.仕上げ 最後にナットやサドルを取り付け、弦を張ります。ヤイリギターは基本的に、サビにくいコーティング弦を使用しています。 21.サウンドチェック ギターを弾きやすく調整し、出荷出来る状態にする作業です。 ネックの反り、弦の高さ、弾きやすさ、オクターブ調整など、特にナットやサドルの溝を削ったり実に細かな調整を行っています。PU付きのギターはそのチェックも行います。 22.最終検品 ここで見るのは傷などの商品的な部分です。検品が済んだら、ラベルを製品ラベルに貼り替え、保証書を付けて、梱包、出荷致します。 なんとこの食堂の床ギター用のマホガニーらしい........、現在食堂にライヴホールを作成中。完成が楽しみです