
『C.F.MARTINナザレス本社』
いつ来ても特別な場所として気の引き締まる気持ちになるマーチン本社。クリスチャン・フレデリック・マーティンが37歳で故郷を旅立ちニューヨークに渡った1833年からその歴史は今でも一族経営で続いています。今年もそんなアコースティックギターの総本山と呼べるMartin本社へ、わたくし村主(すぐり)が行って参りました。今年で早9度目の訪問となります。
出張1日目
どの業界も同じかもしれませんが、アメリカのインフレや為替の問題、戦争による原油の高騰など、様々な要因で楽器業界でも輸入ギターの値上がりが続いております。Martinももちろん例外ではございませんので、ご購入をされるお客様の選ぶ人気モデルやスタイルも徐々に変わりつつあります。今年は当店からのカスタムオーダーも内容の趣向を少し変えて、よりワンオフの仕様やカスタムオーダーではないと実現出来ないスペックを追求してみました!
さて、今年のツアーでの目的ですが例年と同じく、
・当店オリジナルのカスタムショップ製Martinギターのオーダー
・国内未入荷のカスタムショップ製Martinギターの現地買い付け
この2点がメインです。それでは早速行ってみましょう。

まずはいつもの飛行機の旅。成田を夕方に出て、およそ13時間ほどのフライトを経て近郊のニューアーク国際空港に到着するのがまた夕方頃となります。ここ数年は毎年9月に赴いていましたが、今年はツアーが11月になったこともあり、既に日は暮れかけていました。

ホテルに到着すると、いつものエントランスがすっかりハロウィン仕様に。(写真は翌日の早朝に撮影したものです)日本の雰囲気ハロウィンとは違って渋さがあるのが良いですね。この日は空港からホテルまでの道も大渋滞で到着したのが22時過ぎ。ゆっくり休んで次の日からのマーチン社訪問に備えるのでした。
出張2日目
例年と同じく、本日からMartin工場へと出発。

気持ちの良い晴天の中、マーチン本社工場到着。いつ来ても沢山の観光客が工場ツアーを行っており、世界中のギター好きの方の観光地にもなっています。日本の当店のお客様でも「マーチンの工場行ってきましたよ!」と言う常連様もいらっしゃいました。マーチン好きは一度は訪れてみても後悔はないと思いますよ。

今年からマーチンのカスタムショップの商談を専門的に行えるスペースをマーチン社が増設。ちょうど10月に出来たばかりでした。こちらはその部屋の壁の写真(笑) 写真が分かりにくくて申し訳ないのですが、大きな会議場が作られていました。昔はこうして工場まで来て木材の選定を行うのは日本のディーラーか地元の楽器店だけだったようですが、近年ではヨーロッパや中国のディーラーが頻繁に訪れるようになったそうです。

ということで、各楽器店の皆さんやマーチンカスタムショップチームも集合。今回の出張は1日目が当店オリジナルオーダーのギターに使用する木材選定、2日目がカスタムショップクラフトマンたちが製作した完成品のMartin Custom Shopギターの買い付けとなります。今年はどんな内容になるか、期待に胸を膨らませて進めて参ります。
ワタナベオリジナル・カスタムオーダーモデル2024
さて、今年の当店オリジナルカスタムオーダーは計6本です。
毎年Martin社が用意してくれていた「プロモーション企画」が今年は無かったため、7本全てがオリジナルスペックの当店だけのワンオフ仕様となります。
※カスタムショッププロモーションとは「通常のカスタムオーダーよりお買い得価格でカスタムショップへオーダーできる代わりに、オーダー可能な仕様の範囲がマーチン社が定めた範囲内に制限されているモデルのこと」
その代わりと言ってはあれですが、今回はカスタムショップチームよりサプライズの特別企画もありました!!こちらは後述致しますので乞うご期待を。
今年のオーダー分も長年のカスタムオーダーの経験から、仕様や選定材の組み合わせによって最大限にコストパファーマンスを引き出せるよう努力しておりますので、是非楽しみながらご覧ください。
オーダーNO.1■
CTM OMC-41
Premium Adirondack Spruce / Premium Indian Rosewood
いきなりカッタウェイ?!という感じですが、今回のオーダー品は殆どがカッタウェイです。ノン・カッタウェイ教の皆様、大変申し訳ございません((。´・ω・)。´_ _))ペコリン
まず1本目のこちらのギターはOMをベースにカッタウェイ仕様の41スタイルとしました。
41にした理由はシンプルにプライス的な問題で、42仕様と販売価格で凡そ80万円ぐらいはお値段が上がってしまいます。今回はカッタウェイの仕様という事もあり、どちらかと言うと伝統的なスタイルではなく、見た感じのルックスに拘ってオーダーしましたので、敢えて41のスタイルを選ばせて頂きました。

※写真は以前当店でカスタムした000-41のカッタウェイ仕様。ルックス的にはこのモデルに非常に近い仕上がりとなる予定です。
トップ材はプレミアムグレード指定のアディロンダックスプルースを選定させて頂きました。やはりマーチンのギターのトップにはアディロンダックスプルースがとても良く合います。柔らかくほどけるように広がるマーチンの音色に、音に厚みがあり、押し出す力の強いアディロンダックスプルースは相性抜群。年々ストックが少なくなっている気がするアディロンダックスプルースのプレミアムグレードですが、ここはやはり現地選定の強みを活かしてしっかり見定めさせて頂き、納得のいく1枚を選ぶことが出来ました。
トップ材:プレミアムグレード(8)のアディロンダック・スプルース

40番台に使用する木材は基本的には美しさは絶対に欠かせません。その前提を満たした上で更に、サイド&バック材に合わせる木材を何にするかによって、パワーが有るもの、剛性が強いもの、タップトーンが硬い、柔らかい、高い音、低い音、などなど、最終の出来上がりのイメージに合わせてチョイスは変えております。

今回のこちらのモデルは合わせる木材がインディアンローズウッドでしたので、剛性が強く、硬めでハイトーンなタップトーンの木材を選びました。インドローズはややモコっとした音色なので、抜けが良く、パワフルなトップ材が良く合います。

サイド&バック材はプレミアムグレード(4)のインディアンローズウッド材をチョイス!

美しくてすっと綺麗に伸びる柾目のインディアンローズウッド。やはりこちらも40番台に使用する材として適していると思えるものを探しました。納得のいく木材を選定出来ましたのでとても満足しています。
濡れてシミのように見える部分があるかと思いますが、これは塗装が乗ったあとの色味を見るためにアルコールを吹いたため。仕上がり時には見えませんのでご安心ください。

バインディング材はフレイムのハワイアンコア材に指定。

ルックスに拘りたかったので、ボディバインディングは全てフレイムの出たハワイアンコア材を指定しました。この写真のモデルも当店で過去に製作したOMC-41のもの。同じくバインディングはハワイアンコアにしたものです。今回のオーダー品はトップ材をエイジングトナー着色するので仕上がりイメージは変わりますが、サンプルとして画像を載せさせて頂きます。
今回はヘッドのロゴはC.F.Martinの縦ロゴにしており、指板のインレイもアヴァロンのヘキサゴンとなります。また、ロゼッタのデザインは45スタイルにしております。
●その他の拘りオーダーポイントまとめ
ネック材:マホガニー
ブレーシングパターン:スキャロップXブレーシング/ゴールデンエラスキャロップ
ナット&サドル:牛骨
ヘッドロゴ:CF.Martin縦ロゴ
指板インレイ:スモールヘキサゴン
トップ着色:エイジングトナー
ブリッジスタイル:ゴールデンエラ・モダンベリー
ペグ:Grover Gold V97-18GA
ルックスに拘った、モダンな雰囲気の漂うモデルになると思います。是非お楽しみに。
というわけで、以下のスペックでオーダーしております。
CTM OMC-41
トップ材:プレミアム・アディロンダック・スプルース(グレード8)
サイド&バック材:プレミアム・インディアンローズウッド(グレード4)
指板&ブリッジ駒:ブラック・エボニー
ネック:マホガニー/GE Mod.Low Oval / High Performance Taper(44.5mmナット幅)
ボディバインディング:Hignly Flamed Koa
塗装:グロスボディ / サテンネック
2025/8月以降に順次入荷
オーダーNO.2■
CTM OMC-41 Black
Premium Sitka Spruce / Premium Indian Rosewood
さて、こちらのモデルもOMカッタウェイ・スタイルベースにアヴァロン装飾を施した41モデルなのですが、こちらのモデルは更に「オールブラック・カラー」仕様にしております。
これまで100本近く、マーチン社でカスタムショップにカスタムオーダーをして来ましたが、以外にも?カラー物をオーダーするのは今回が初めて。なぜ今回オールブラックのギターをマーチンにオーダーしたかと言いますと、これはやはり冒頭でも書かせて頂いたように、マーチンギターをお探しのお客様が多様化してきたという部分に影響を受けております。
伝統的なマーチンの様式美だけではなく、モダンな仕様を取り入れた現代的なマーチンを皆様にご提案したいと思い、カスタムショップクラフトマンとも色々と話した上で、真っ黒のマーチンをオーダーしてみたいと思い拘らせて頂きました。
トップ材:プレミアムグレード(8)のシトカ・スプルース

D-45用のプレミアムグレードのシトカスプルース材のストックの中から、贅沢にも一番良い杢目の材を選ばせて頂きました。「黒く塗り潰すのにもったいない」という声が聞こえてきそうですが、この辺りはカスタムオーダーならではの特権かと思います。グレードによってサウンドも変わりますので、妥協はできないポイントです。

サイド&バック材:プレミアムグレード(4)のインディアンローズウッド

こちらもブラックに塗るので杢目自体は完成すると見えないのですが、妥協無く選定させて頂いております。グレードが「4」となっていますが、サイド&バック材は全部で4段階のグレード分けになっていますので、こちらが最高グレードのものとなります。
ちなみに余談ですが、これらのグレード分けとは別に「45専用のインディアンローズウッド」という物もございます。これは45で注文すると使用できます。昔は「選ばせて欲しい」と伝えると45以外のオーダーでも使わせて頂けたのですが、昨今の木材不足の影響で今では45専用になってしまいました。

バインディング材はフレイムのハワイアンコア材に指定。
そして、このオールブラックのモデルにも、バインディング材としてフレイムのハワイアンコアを指定しました。ブラックのボディにコア材のバインディングはかなり映えますので、白のバインディングに比べてかなり高級感のあるルックスになるかと思います。
こちらのモデルに関しましても、ヘッドのロゴはC.F.Martinの縦ロゴを採用。指板のインレイもアヴァロンのヘキサゴン、ロゼッタのデザインは45スタイルとなります。
また、ピックガードは敢えてブラックカラーを選択しました。ブラックのボディにブラックのピックガードがめちゃくちゃ渋い!と思いました。はい、私の好みです。
●その他の拘りオーダーポイントまとめ
ネック材:マホガニー
ブレーシングパターン:スキャロップXブレーシング/ゴールデンエラスキャロップ
ナット&サドル:牛骨
ヘッドロゴ:CF.Martin縦ロゴ
指板インレイ:スモールヘキサゴン
着色:オールブラック・カラー
ブリッジスタイル:ゴールデンエラ・モダンベリー
ペグ:Grover Gold V97-18GA
当店カスタムオーダーモデルの中で初のカラーモデルになります。是非お楽しみに。
というわけで、以下のスペックでオーダーしております。
CTM OMC-41
トップ材:プレミアム・シトカ・スプルース(グレード8)
サイド&バック材:プレミアム・インディアンローズウッド(グレード4)
指板&ブリッジ駒:ブラック・エボニー
ネック:マホガニー/GE Mod.Low Oval / High Performance Taper(44.5mmナット幅)
ボディバインディング:Hignly Flamed Koa
塗装:グロスボディ / サテンネック
カラー:オールブラック
2025/8月以降に順次入荷
オーダーNO.3■
CTM OMC-28
Adirondack Spruce / Indian Rosewood
さて、お次は28になります。皆さんがOMカッタウェイの28と聞くと1番に思い浮かべるのがローレンスジュバーモデルのOMC-28LJではないでしょうか?当店でも以前に何度かオーダーしたことのある超人気モデルです。
今回はそんなOMC-28LJの基本的な特徴をしっかりと引き継ぎながら、Waverlyチューナーやジグザグバッグストリップいった高額になる仕様変更を敢えて行わず、プライス的にもお買い得感を感じて貰えるように色々と試行錯誤をしながらスペックアウトしました。
インドローズS&Bの仕様でも、当時2024年11月のオーダープライスでOMC-28LJドンズバの仕様でプレミアムグレードを指定すると凡そ150万円ほどの見積となりました。さすがに少し高いかなと。ですので、高額になってしまう細やかな拘りは一度置いておいて、木材グレードも敢えてスタンダードでお見積りを取った上で、現地で良い材を選んでコストパフォーマンスを上げようという作戦です。

写真は以前に当店でオーダーしたOMC⁻28LJ仕様のカスタムモデル。指板にポジションマークが無く、ピックガードも無しの仕様が特徴です。
トップ材:アディロンダック・スプルース

スタンダードグレードながら、杢目、タップトーンなど、めちゃくちゃ厳選させて頂き選ばせて頂けました。プレミアムグレード指定だと逆に10ストックぐらいの中からの選定になりますが、スタンダードだと30セットぐらいの中から選定出来ますので、十分に吟味したうえで気に入る材を見つけることが出来ました。

サイド&バック材:インディアンローズウッド

こちらもストックは大量にある中で、LJスタイルにふさわしい綺麗で端正な見た目の木材を選定。目が細かくストレートグレインで、長くご使用いただくにあたって狂いが少ないであろう材を選ばせて頂きました。
ブリッジ:ピラミッドブリッジに変更

この仕様はオリジナルのLJには無い当店オリジナルのカスタムとなります。モダンな雰囲気を出したかった為、ブリッジをピラミッドブリッジにしました。装飾の少ないモデルですが、こういったワンポイントがお洒落を演出してくれます。
ヘッドプレートをグロスフィニッシュに変更

このスタイルは最近のカスタムショップの流行りとなっています。28のヘッドプレートは基本的にサテンフィニッシュですが、こうすることで正面から見た時にフルグロスフィニッシュに見えるため、とても高級感が出ます。今回のこちらのモデルに採用しております。
●その他の拘りオーダーポイントまとめ
ブレーシングパターン:スキャロップXブレーシング/ゴールデンエラスキャロップ
ナット&サドル:牛骨
ヘッドロゴ:CF.Martinオールドデカール(ゴールド)
指板インレイ:なし
ピックガード:なし
トップ材着色:エイジングトナー
ブリッジスタイル:モダンピラミッド
ペグ:Grover Gold V97-18GA
塗装フィニッシュ:グロスボディ/サテンネック/グロスヘッドプレート
当店としても久しぶりのOM28カッタウェイ。是非お楽しみに。
というわけで、以下のスペックでオーダーしております。
CTM OMC-28
トップ材:アディロンダック・スプルース
サイド&バック材:インディアンローズウッド
指板&ブリッジ駒:ブラック・エボニー
ネック:マホガニー/GE Mod.Low Oval / High Performance Taper(44.5mmナット幅)
2025/8月以降に順次入荷
オーダーNO.4■
CTM 00-17
All Mahogany

※画像はイメージです
こちらは当店のスタッフからの案で「オールマホガニーのギターをカスタムショップで製作したい」ということでカスタムオーダーいたしました。カスタム元は00-17モデル。
そもそもオリジナルのヴィンテージが60~70万円ほどの市場価格である為、何かしらオリジナルとの差別化を計って、現代のマーチンカスタムショップで作ったオールマホモデルの完成度の高さを皆様に知って頂きたいという思いから拘ってスペックアウトしました。
ボディ用のマホガニー材をチョイス!

オールマホガニーモデル用のセットとしてトップとバックが対になった材セットをこのモデルの為に何セットか用意してくれていたカスタムショップチーム。その中でもう見た目も色も段違いだった1セットを選定。選定時間1分ほど。一瞬で決まりました!一目見てわかる良質な材がありました。ラッキーでした。
ペグはWaverlyのアイボロイドボタン

ペグはWaverlyのアイボロイド柄のボタンにしました。オールマホのモデルだからと言ってチープなモデルではないんだぞ。という意思の表れです。
ヘッドプレートをグロスフィニッシュに変更

こちらのモデルでもヘッドプレートはグロスの仕様に。高級感ある雰囲気に仕上がります。
エボニー材の指板&ブリッジ仕様に
オリジナルの17はブラジリアンローズウッド材の指板とブリッジの仕様が主流。今回の当店オーダー分はローズウッドではなく敢えてエボニー材をチョイスしました。サクサクとほぐれるサウンドではなく、まとまりがありくっきりとした音像のギターになる様にイメージしております。
●その他の拘りオーダーポイントまとめ
ブレーシングパターン:スキャロップXブレーシング/ゴールデンエラスキャロップ
ナット&サドル:牛骨
ヘッドロゴ:CF.Martinオールドデカール(ゴールド)
指板インレイ:Old 18 Style
ピックガード:べっ甲柄
ロゼッタ:Old 17 Style
ブリッジスタイル:スタンダード / ロングサドル
ペグ:Waverly Nickel 4065 w/ vintage ivoroid Btn
塗装フィニッシュ:グロスボディ/サテンネック/グロスヘッドプレート
上質なオールマホガニーのサウンドをお楽しみ頂ける1本になると思います。
というわけで、以下のスペックでオーダーしております。
CTM OMC-28
トップ材:マホガニー
サイド&バック材:マホガニー
指板&ブリッジ駒:ブラック・エボニー
ネック:マホガニー/GE Mod.Low Oval / High Performance Taper(44.5mmナット幅)
スケール:632.5mm
2025/8月以降に順次入荷
Martin Factory Tour 2024 スペシャル企画
ここからは我々参加ディーラーも直前まで知らされていなかった、マーチンカスタムショップチームが用意してくれていたスペシャル企画をご紹介!!
それがこちらです!!


はい!この画像だけで分かった方は相当の手練れでしょう。なんとこちらは、2021年から受注がストップとなっていた「マダガスカルローズウッド」。マーチン社曰く全てがプレミアムグレードとのこと。
今回、我々日本ディーラー向けに30セット程ではありますが、特別に用意をしてくれていました。私自身、マダガスカルローズウッド材の板を見るのはコロナ前が最後なので6年ぶりぐらいでした。
今回もう既に何をオーダーするかなどは全てが決まったあとで知らされた企画でしたので、どのような企画なのか確認してみると。マーチン社曰く「今回持ってきた案にアップチャージを払えば、この中から選んだマダガスカルローズウッド材にサイドバックを変更することが出来る」とのこと。
いや、逆にもうコンセプト決めてるからそれはそれで難しいんですよね!!とは思いましたが、せっかくの機会でこんなことそうそうないでしょうから、悩みに悩んで2つのモデルをマダガスカルローズウッド材へ変更してオーダーする事にしました。
オーダーNO.5■
CTM OMC-42
Premium Adirondack Spruce / Premium Madagascar Rosewood
「まーたOMカッタウェイかよ!」って思われた方、すみません。またでございます。今年オーダーしたギターの中では最も高価なモデルとなるこちらのOM-42ベースのカッタウェイモデル。
やはり趣向を変えたい年は一気にやった方が良い。と思い、42スタイルのカッタウェイもご用意しました。しかも、プレミアムグレードのアディロンダックスプルースとプレミアムグレードのマダガスカルローズウッドの組み合わせ。この組み合わせでオーダーするのはもう何年振りでしょうか。この組み合わせのギターのファンだという方も多いはずです。
マーチン社も用意の出来た枚数が少なかったので、今回も各ディーラーでジャンケンして、勝った順番で選んでいくことに。運よく早い順番で選ぶことが出来ました。
選定させて頂いたマダガスカルローズウッド材はコチラ!

知っている方ならパッと見て「マダガスカルローズウッド」と分かるとても良い材をゲット出来ました。色味も濃い赤紫色で、これは42に使用しても申し分のない木材だと思います。やったぜ。

ここに塗装が乗れば、かなり良い感じの黒紫系の色味になるかと思います。コロナ以前の2010年代後半の出張の際でも、こういった杢のマダガスカルは既に殆どない状態でしたので、今回マーチン社が「プレミアム」というのも納得です。

TOP材:アディロンダックスプルースのプレミアムグレード(8)
今回のこのマダガスカルローズウッド企画で選択したモデルに関しては、トップ材の選定が有りませんでした。ここはカスタムショップクラフトマンにお任せとなります。スペックシート上では最高グレード8のアディロンダックスプルースで指定しておりますので、まぁ間違いないかと思います。
バインディング材はフレイムのハワイアンコア材に指定。

他のモデルにも採用しておりますが、バインディング材の変更も外せないポイント。フレイムの出た美しいハワイアンコアでバインディング材を巻く事で非常に高級感が出せます。この画像は以前に当店でオーダーして製作したOMC-42。ルックス的にはほぼこちらと同じになりますので、参考として載せさせて頂きます。
その時の動画がこちら。このモデルはサイド&バック材がインディアンローズウッドでしたが、今回はマダガスカルローズウッドですので、より深く甘美な低音を響かせてくれることでしょう。
●その他の拘りオーダーポイントまとめ
ネック材:マホガニー
ブレーシングパターン:スキャロップXブレーシング/ゴールデンエラスキャロップ
ナット&サドル:牛骨
ヘッドロゴ:CF.Martin縦ロゴ
ヘッド突板:マダガスカルローズウッド
指板インレイ:Style 45 Snowflake(Long)
ピックガード:べっ甲柄
ロゼッタ:Style 45
ブリッジスタイル:Golden Era Moden Belly / 6pt Snowflake
ペグ:Grover Gold V97-18GA
TOP板着色:エイジングトナー
塗装フィニッシュ:フルグロス
今となってはこういったスペシャル企画でしか実現できなくなった、特別なスペックの1本。
というわけで、以下のスペックでオーダーしております。
CTM OMC-42
トップ材:プレミアム・アディロンダックスプルース(グレード8)
サイド&バック材:プレミアム・マダガスカルローズウッド(グレード4)
ネック材:ジュイニーマホガニー/GE Mod.Low Oval / High Performance Taper(44.5mmナット幅)
指板&ブリッジ駒:ブラック・エボニー
スケール:632.5mm
ボディバインディング:Highly Flamed Koa
2025/8月以降に順次入荷
オーダーNO.6■
CTM OMC-28
Adirondack Spruce / Premium Madagascar Rosewood
マダガスカルローズウッド材を使用した2本目のギターはコチラ!OM-28のカッタウェイモデル。このギターは今回オーダー分のNO.3でご紹介したOMC-28のスペックのまま、サイド&バック材をマダガスカルローズウッドに変更したモデルとなります。
インドローズでも十分すぎる生音ですが、マダガスカルローズに変更することでよりディープな低音を響かせることが出来ます。OMC-28M LJも非常に人気があったように、この仕様のOM28カッタウェイをお探しだった方も一定数いらっしゃるのではないでしょうか。
選定させて頂いたマダガスカルローズウッド材はコチラ!

先程の材より少し赤みが強く、美しい杢目が特徴的。一見して上質なローズと分かる木目がとても気に入っています。

トップ材:アディロンダックスプルース
こちらのモデルもトップ材はカスタムショップのクラフトマンにお任せとなりました。きっと最適な材を選んでくれると思いますので、期待したいと思います。
ブリッジ:ピラミッドブリッジに変更

NO.3のモデルと同じくピラミッドブリッジ仕様。こういったワンポイントが他人とは違ったお洒落を演出してくれると思っています。
ヘッドプレートをグロスフィニッシュに変更

そしてヘッドをグロスフィニッシュ。高級感がグッと上がります。
●その他の拘りオーダーポイントまとめ
ブレーシングパターン:スキャロップXブレーシング/ゴールデンエラスキャロップ
ナット&サドル:牛骨
ヘッドロゴ:CF.Martinオールドデカール(ゴールド)
指板インレイ:なし
ピックガード:なし
トップ材着色:エイジングトナー
ブリッジスタイル:モダンピラミッド
ペグ:Grover Gold V97-18GA
塗装フィニッシュ:グロスボディ/サテンネック/グロスヘッドプレート
マダガスカルローズウッド材を採用した特別なOM28カッタウェイ。是非お楽しみに。
というわけで、以下のスペックでオーダーしております。
CTM OMC-28
トップ材:アディロンダック・スプルース
サイド&バック材:プレミアム・マダガスカルローズウッド
指板&ブリッジ駒:ブラック・エボニー
ネック:マホガニー/GE Mod.Low Oval / High Performance Taper(44.5mmナット幅)
2025/8月以降に順次入荷
オーダーNO.7■番外編
CTM D12-42
Premium Adirondack Spruce VTS / Premium Indian Rosewood
さて、こちらの1本は番外編にはなりますが、お客様からオーダーを頂いたギターを少しだけご紹介させて頂きます。毎年私のマーチン社出張に合わせてギターのオーダーを頂いており、こちらのギターもその中の1本となります。
D-42の12弦仕様という事で、有名なところで言いますとRoger McGuinnのモデル等がございますが、やはり40番台仕様の12弦ギターと言うのは入手の機会がかなり少ないモデルになるかと思います。
今回オーダー頂いたのはトップ材をプレミアムグレード・アディロンダックスプルースにVTS仕様を施したものに変更し、フレイム・メイプルバインディングやナット幅変更などをカスタムした特注モデルでした。
トップ材:アディロンダックスプルースVTS(プレミアムグレード)

お客様からのご要望を頂いたオーダー品の木材はいつも1番最初に選定を終わらせるように心がけています。これはやはり期待を持ってオーダーして下さったお客様にギターをお渡しする際には「任せて良かった」という満足感を感じて頂きたいという気持ちからで、材料は一番良いものを割り当てられるようにしています。

今回選定したアディロンダックスプルースはこちら。VTS処理がされている材はセンターが黒っぽくなるのですが、それが出来るだけ自然に綺麗に見え、且つ杢目自体もストレートグレインで間隔が狭いものをチョイスしました。
サイド&バック材:インディアンローズウッド (プレミアムグレード)

インドローズは出来るだけ黒っぽいものを選択。内巻の杢目もあまり好きではないので、やはりストレートグレインに近いもので拘りました。バック材の色味によってギターの雰囲気もかなり変わりますが、40番台はやはり暗めで深い色のバックの方が格好良いと思っています。
以上、お客様のギターですので細かい詳細は伏せますが、納得のいく選定が出来て満足です。
さて、以上が出張2日目の木材選定会でした。今年はプロモーション企画が実施されませんでしたので、フルカスタムの6本のみのオーダーとはなってしまいましたが、どれも拘り抜いた材料とスペックに出来たと思っています。
これらのギターは順不同ではありますが、およそ8カ月~入荷予定とのこと。このマーチン社訪問が2024年11月でしたので、ちょうど夏ごろ辺りから出来上がったギターが入荷し始めるのかなと期待しています。
どんな仕上がりになってくれるのか、是非ご期待ください。
出張3日目
カスタムショップ買い付け品ご紹介

さて、出張3日目は朝から完成品カスタムショップギターの仕入れ選定会。1本限りの特注カスタムショップ製ギターを直接買い付けする為に選定をしていきます。
この買い付け品というのはどういう物なのかを説明しますと、我々日本を代表するディラーのマーチン社訪問に合わせて、カスタムショップのクラフトマンたちが独自に製作してくれたモデルたちになります。基本的には少数だけスポット的に仕入れたレアな高級木材を使っていたり、デザインや仕様などでまだ一般的には流通していない最新の仕様が施してあったりなど、我々がカスタムオーダーとしても選択できない仕様などが多く盛り込まれたギターたちになります。
本数も限られていますので、選定の順番などはご一緒している他社さんとももちろん競合します。ですので、昨年も行われたドラフト形式の抽選にて順に購入権を獲得していく形となりました。
私は特にレアなカスタムショップ製の40番台のギターが狙いだったので、競争率はかなり高かったのですが、何とかお目当ての2本のギターを仕入れることが出来ました。物凄く良いギターばかりなので、早速ご紹介いたします。
① CTM OM-42
"Premium Italian Alpine Spruce & Premium Flame Myrtlewood"

1本目はこちらのOM-42。なんとサイド&バック材に美しいフレイム杢の出たマートルウッド材を使用しています。この木材がマーチンで使われることは非常にレアで、特に40番台となると殆ど見ることない、まさに1オフの特別な仕様になっています。

マートルウッドは比較的タイトで非常にレスポンシブルな木材となっております。ピック弾きの方は勿論ドンズバすぎるサウンド。フィンガースタイルでも早いパッセージもしっかりと鳴らしてくれますので、ローズ系では得られない魅力が詰まっています。

トップ材はプレミアムグレードのイタリアンアルパインスプルース。非常に美しく、綺麗な杢目です。ブリッジもストレートブリッジに4ポイントのスノーフレークインレイが施されており、カスタムショップならではの雰囲気。

ボディバインディング材がヨーロピアン・フレイムメイプル材で巻かれており、とても端正で綺麗な雰囲気に仕上がっています。ヘッドの突板はエボニー材で、ここにブラックがあることでギターが非常に引き締まって見えますね。

バック材のフレイムマートルウッド。とても美しいフレイムの材が使われています。

とても希少なモデルではありますが、サウンドクオリティも非常に高く攻守共に素晴らしいギターです。コレクションとしても十分に価値のあるモデルかと思います。Martinとマートルウッドの組み合わせはマニアな方でも殆ど体感されたことのないものかと思いますので、是非一度ご機会があれば店頭でもお試しください。
スタイル:OM-42
トップ材:イタリアンアルパイン・スプルース(プレミアムグレード 7-8 )
ブレイシング材:アディロンダック・スプルース / Xブレイシング・Golden Era スキャロップド
サイド&バック材:フレイムド・マートルウッド(プレミアムグレード)
指板:ブラック・エボニー
指板インレイ:Maltese Snowflake
ブリッジ駒:ブラック・エボニー / Modern Straight Line
天神材:ブラック・エボニー
バインディング材:ヨーロピアン・フレイム・メイプル
ネック材:マホガニー
ネック形状Modified Low Oval /High Performance Taper(1 3/4ナット幅)
ヘッドロゴ:C.F.MARTIN ブロック
ペグ:Grover Gold V97-18GA 18:1
トップカラー:エイジングトナー
販売価格:2,150,000円(税込)
⇒商品WEBページはコチラから!
① CTM OM-41
"Premium Sitka Spruce & Premium Wild Grain E.Indian Rosewood"

このギターは一目見た時から惹かれてしまいました。激渋の1933 AmberToneカラーに、41仕様のアヴァロン装飾、フレイム・ハワイアンコア材のボディバインディングで、茶色のカラーのギターに茶色のバインディングを巻くという本当にハイセンスな1本。ほぼ同色に見えるワイルドグレインのインディアンローズウッド材をサイド&バックに使う事で、カラーをしていない横や後ろ側とも完全な一体感を演出しています。

指板インレイは45スタイルのスノーフレークで、非常に豪華に見えます。トップ材のシトカスプルースはプレミアムグレード。この存在感だけで非常に興味をそそられたのですが、試奏してみたらもうめちゃくちゃ気に入ってしまって、日本に持って帰ることにすぐ決めました。芯が有ってぼやけない低音とプレーン弦のキラキラ感が本当に素晴らしいです。

ただただ美しい。

ペグはギア比の高い高精度なSchallerのGold GrandTuneですが、ペグボタンはまたコア材を使用しています。単純なゴールドペグにしない所にこのカスタムをデザインしたカスタムショップクラフトマンのセンスの良さを感じます。

おとなしい杢目ですが、サイド&バック材はワイルドグレイン・イースト・インディアンローズウッドという木材が使用されており、カスタムの値段はグアテマラローズなどと同額の非常に高級な材となります。

バックから見ても濃い茶色で、非常に統一感のあるモデルだと思います。これまであまりバースト着色のマーチンにはピンときたことが無かったのですが、このモデルは細部に渡って拘られていて、サウンド、ルックス共に惹かれるものが非常に多かったです。超お薦め。
スタイル:OM-41
トップ材:スプルース(プレミアムグレード 7 )
ブレイシング材:スプルース / Xブレイシング・スキャロップド
サイド&バック材:ワイルドグレイン・イーストインディアン・ローズウッド(プレミアムグレード)
指板:ブラック・エボニー
ブリッジ駒:ブラック・エボニー / Modern BELLY
バインディング材:フレイム・ハワイアンコア
ネック材:マホガニー
ネック形状Modified Low Oval /High Performance Taper(1 3/4ナット幅)
ヘッドロゴ:C.F.MARTIN ブロック
ペグ:Schaller Gold GrandTune / Koa Oval Btn
カラー:1933 AmberTone
販売価格:1,640,000円(税込)
⇒商品WEBページはコチラから!
以上、買い付け品のご紹介でした。
値段が高くなってきているので、昔のように面白いからと言ってぽんぽんと買ってくることは出来なくなってしまいましたが、クオリティの高い仕入れが出来たので大満足でした。
あとがき..
さて、今回も長丁場となりましたが最後までのお付き合いありがとうございました。
今回はいつもよりも更に1本物!という雰囲気が出るものをスペックを考えている時から意識しました。木材選定も妥協無く、満足いくものが選べたので、出来上がりが非常に楽しみです。
【余談】

マーチン社のレジェンド。ディック・ボーグさんがたまたま遊びに来られており、数年ぶりにお会いすることが出来ました!ディック・ボーグさんは、広告ディレクターや販売促進部門、リミテッドエディションやアーティストモデル企画など、マーチン社のあらゆる部門で数々の功績を残した方で、90年以降のマーチン社の最盛期を作った方です。
どんな時代の、どんな有名な企業でも、こうした個人の熱量とセンスによって成り立っているんだよ。というお手本の様な方だなと思います。
【最後に】
「オリジナルのマーティンを最高の素材で作ってきて欲しい」
マーティンをこよなく愛するお客様、大募集です。
自信を持って最高の木材をハンドセレクトさせて頂き、ご満足いただける最高の1本をオーダーしてきます。
マニアックな仕様にも全て対応致しますので、ご要望があればお気軽にご連絡下さい。
まずはお見積もりから始めて頂けますので、村主宛に何でもご相談ください。
2023年のファクトリーツアーの様子はコチラから↓

ワタナベ楽器店 京都本店
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